インボイス制度の登録判定フローチャートを掲載し、インボイス制度の内容について簡潔にまとめました。
インボイス制度判定フローチャート
インボイス制度の施行まで残り半年となりました。
しかしながら、未だインボイス制度をどうしようか迷っている方が多くいるのが現状です。
そこで当事務所ではインボイス制度の判定のための簡便的なフローチャートを作成しました。
下図がインボイス制度の判定フローチャートです。
上記フローチャートを確認し、内容が不明確な方については、次の項目以降で消費税の納税義務や計算の仕方などをご説明しますのでご確認ください。
法律の位置付けと用語の意義
インボイス制度の法律の位置付けと、用語の意義についてまとめたものが以下の図です。
①インボイス制度は消費税法の制度です。
②インボイスとは適格請求書のことを指しており、
③適格請求書を発行するには税務署に申請書を提出して登録しなければなりません。
④適格請求書発行事業者の登録を通称インボイス登録と呼んでいます。
請求書の発行は登録申請等を行う必要がありませんが、適格請求書(インボイス)を発行するためには登録が必須です。
なお、インボイスの登録番号は以下の国税庁HPで確認することができます。
国税庁HP:インボイス制度 適格請求書発行事業者公表サイト
(https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/)
ちなみに、当事務所のインボイス登録番号(適格請求書発行事業者登録番号)は「T6810142766229」です。前記サイトで検索してみてください。
インボイス登録番号は、法人であれば法人番号が割り当てられるので、国税庁法人番号公表サイトから法人番号を検索し、前記国税庁インボイス登録番号公表サイトで検索を行えば、その法人がインボイス登録を行っているかの確認ができますが、個人事業主の場合には秘密事項であるマイナンバーをインボイス登録番号とすることができないので、ランダムに番号が発行されます。
負担者と納税義務者
ここからは、消費税の基本的な内容について確認していきます。
所得税や法人税などとは異なり、消費税は負担者と納税義務者がイコールではありません。
下図をご覧いただくと分かるとおり、飲食をする方(負担者)は、納税義務者(事業者)であるカフェに消費税を含んだ価格を支払い、カフェは預かった消費税を国へ納付するという流れになっています。
納税義務
続いて、納税義務について少し掘り下げて確認していきます。
納税義務者には事業者が該当し、前々期の課税売上高が1,000万円以下の事業者に関しては納税義務が免除されています。
下図の例で確認すると、例えばR4.4.1に設立を行った3月決算法人は、第1期と第2期に関しては前々期はなく、売上高はありませんので納税義務が免除されます。つまり免税事業者に該当します。
第3期及び第4期に関しては、前々期(第1期及び第2期)がありますので、それぞれの期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者、1,000万円以下であれば免税事業者に該当します。
消費税は、消費に対して広く公平に課税される税ですので、国内で消費活動を行った者(人及び会社)が負担者です。
納税義務者は、前々期の課税売上高が1,000万円超の事業者が該当します。
消費税の納税額の計算
具体的な消費税の納税額の計算方法ですが、取引を仮定して具体的に消費税の納税額の計算方法を確認します。下図の三者は実在する人物や会社とは一切関係ありません。
例えば、(株)日本商社が4,400万円(税込)で受注してきた工事を、田口建設(株)に2,200万円(税込)で外注し、更に田口建設(株)は岩沢さんへ外注した取引があると仮定します。
上図の取引から、消費税だけに着目して計算方法を確認すると下図のとおりです。
(株)日本商社は、預かった消費税400万円から田口建設(株)へ支払った消費税200万円を差し引き、納付消費税は200万円です。
田口建設(株)は、預かった消費税200万円から岩沢さんへ支払った消費税80万円を差し引き、納付消費税は120万円です。
岩沢さんは預かった消費税80万円が納付消費税です。
(それぞれの納付消費税の算定について諸経費等は考慮しておりません。)
このように預かった消費税から支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。
インボイス制度施行前 ~ R5.9.30
インボイス制度施行前、つまり現行法令ではどのような取り扱いかになっているか確認します。
支払先が免税事業者か課税事業者かに関わらず、預かった消費税から支払った消費税を差し引くこと(仕入税額控除)が認められております。
下図でいうところ、仮に岩沢さんが前々年の課税売上高が1,000万円以下であり免税事業者であった場合においても、田口建設(株)が岩沢さんに支払った消費税80万円の控除は認められていたというのが現行法令の取り扱いです。
インボイス制度施行後 R5.10.1~
インボイス制度施行後には、前項でご説明した取り扱いが変更されます。
つまり、インボイス制度施行後において仮に岩沢さんが免税事業者であった場合には、田口建設(株)が岩沢さんに支払った消費税は預かった消費税から差し引くことができません。(仕入税額控除ができない)
インボイス制度施行後は、適格請求書(インボイス)を支払者から交付を受けて、それを保存することが支払った消費税を差し引く(仕入税額控除の)要件となります。
したがって、下図でいうと、岩沢さんは田口建設(株)へ、田口建設(株)は(株)日本商社へ、それぞれ適格請求書(インボイス)の交付が必要です。
まとめ
インボイス制度は、仕入税額控除を受けるための手続きが変更になる制度です。
元々課税事業者である方については適格請求書発行事業者登録(インボイス登録)を行えば、登録番号が割り振られるため、特に判断に迷うことはありません。(交付を受けたインボイスの記載事項の確認は必須です。)
しかし、元々免税事業者である方については、適格請求書発行事業者登録(インボイス登録)を行うためには、課税事業者になる必要があり、新たに消費税の申告が必要になります。
このように、インボイス制度は免税事業者に与える影響が大きい制度です。
大きな影響を緩和するために経過措置が数多く設けられております。詳細については以下をご参照下さい。
財務省HP:インボイス制度、支援措置があるって本当!?(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice.pdf)
当記事では簡潔に消費税の仕組みやインボイス制度についてご説明しました。
ただし、帳簿の記載事項や書類の保存方法等、消費税を計算する上では様々な事項を考慮しなければなりません。
当記事でインボイス制度や消費税の計算方法の大枠を捉えていただき、詳細については、以下のような書籍をご参考いただくか、税理士にご相談ください。
※当該記事は個人の意見であり、税務判断の指針を示したものではありません。
※税務事例は多種多様であるため個別具体的な税務判断に関しては、職業専門家である我々税理士にご相談ください。