令和5年10月1日よりインボイス制度が始まります。
インボイス制度を理解するには、その根拠法令である消費税について理解しなければなりません。
そこで当記事では、消費税の仕組みついて簡潔にご説明します。

消費税の課税対象


消費税の課税対象取引は以下の4つの要件を満たした取引です。
・国内において
・事業者が事業として
・対価を得て行った
・資産の譲渡、貸付け、役務の提供(サービス等)

したがって、国内において事業者が行ったほとんどの取引については「課税対象取引」という扱いになります。

そのため、
・国外での取引(海外旅行先での飲食等)
・消費者が行う取引(ネットサイト等を用いた不用品の売却等)
・対価を得て行わない取引(試作品の提供等)
に対しては消費税は課税されません。
これを「不課税取引」といい、上記以外にも給料賞与、社会保険料、税金や寄付など、課税対象の要件は満たすものの、消費という概念になじまないものも不課税取引扱いとなります。

また、
・土地の譲渡や貸付け
・預金の利子
・商品券の譲渡
などといった取引を「非課税取引」といいます。
他にも社会政策的配慮等の観点から法令でいくつか非課税取引が規定されております。

更に、
・国内商品の国外への販売
「輸出免税取引」とされます。
他にも国際通信や国際郵便等も該当し、日本の消費税を国外で消費されるものに課税しないという考えに基づき規定されております。

ここまで、
・「課税対象取引」
・「不課税取引」
・「非課税取引」
・「輸出免税取引」
と4つの取引をご説明しましたが、実務上は「課税対象取引」かそれ以外かで覚えてもらって構いません

更に掘り下げていけば、消費税の計算過程上の取り扱い等で異なる部分が多くありますが、全て覚えようとすると本業に支障が出てしまう可能性がございますので、簡単に消費税の大枠を抑えていただければ十分であると私は考えます。

消費税の変遷・軽減税率


消費税は1989年(平成元年)4月1日にはじめて導入されました。

消費税の導入当初は税率3%でありましたがその後、
・1997年(平成9年)3% → 5%
・2014年(平成26年)5% → 8%
・2019年(令和元年)8% → 10%(軽減税率8%)
と社会保障費の増大等を補うための安定的な財源確保を背景に、消費税率は上記のように引き上げられてきました。

2019年(令和元年)からは、消費税率8%から10%への引き上げに伴い消費税増税による日々の生活負担の軽減を図るため、飲食料品(酒類を除く)や新聞に関しては消費税率8%を据え置き、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を併用した複数税率となりました。

標準税率(10%)と軽減税率(8%)の複数税率によって消費税は更に複雑化しましたが、軽減税率(8%)の対象になるもの(飲食料品・新聞・テイクアウト等)を覚えて、それ以外については標準税率(10%)と覚えていただければいいと思います。

消費税の負担者・納税者


消費税の負担者は消費者です。
消費税は、物品やサービス等が消費されることに着目し、国内消費取引に対して広く公平に課税される税です。

日本国内で消費活動(商品の購入、資産のリースやサービスの提供を受ける等)を行う全ての方が消費税負担者に該当し、その膨大な消費税負担者である人たちが、自ら計算を行って国に消費税を納付すのは大変に困難であり、現実的に不可能です。

そのため、消費税の納税義務を事業者に課し、事業者は消費者から消費税を預かって消費者の代わりに国へ消費税を納税する方法を採用しております。

これは、負担者である消費者が直接国へ税金を納めず、事業者を介して間接的に消費税を納めているため間接税と言われます。
他には、たばこ税や酒税等が間接税に該当します。
ちなみに直接税としては、負担者と納税者が一致する税目として法人税、所得税や相続税等があります。

消費税の計算方法


事業者が消費者から預かった消費税を国に納める計算方法には2つの方法があります。
当該計算方法は、事業者が預かった消費税から差し引く消費税(事業者が支払った消費税)の計算方法です。この支払った消費税を預かった消費税から差し引くことを仕入税額控除と呼びます。つまり、消費税の計算方法とは仕入税額控除の計算方法のことを指します。

2つの方法とは「原則課税」「簡易課税」です。

原則課税は更に、全額控除方式、個別対応方式、一括比例配分方式と3つの方法があり、課税売上割合や課税売上高の多寡で選択できる方式が異なります。
計算方式について簡単にまとめると以下のとおりです。
全額控除方式…支払った消費税をすべて控除する
個別対応方式…支払った消費税のうち課税売上に対応する部分と共通して要する部分を課税売上割合に基づき控除する
一括比例配分方式…支払った消費税の全てを課税売上割合に基づき控除する

原則課税では、支払った消費税を個別に一つ一つ計算して預かった消費税から差し引くため、中小零細企業にとっては事務負担が大きいです。そこで、中小零細企業(前々年又は前々期の課税売上高が5,000万円以下)については、納税事務負担に配慮する観点から簡易課税という方法が認められております

簡易課税は、課税売上高のみに着目し、課税売上高から「支払った消費税を算出」する方法です。
計算方法は、国で定めた事業区分別の仕入率(以下の表を参照)をそれぞれの事業区分別の課税売上高に乗じて、支払った消費税を算出して預かった消費税から差し引きます。

まとめ


当記事では、消費税の課税対象から計算方法までをご説明しました。
消費税は1989年(平成元年)に導入されてから2019年(令和元年)までに、多くの改正が行われております。
令和5年10月1日からはインボイス制度がはじまり、消費税は更に複雑な税制へとなっていきます

いままで消費税に関わりがなかった免税事業者の方達は、当記事でご説明した内容が難しく感じるかもしれません。
しかしながら、令和5年10月1日より開始されるインボイス制度によっていままで通り免税事業者を選択することが困難になります。

免税事業者の方達は消費税の知識を修得することによって、自身に有利な計算方法を選択することができ、結果として税負担の軽減が図れて、予期せぬ資金流出を防ぐことができます

また、設備投資、人材の新規雇用、資金繰り等の勘案事項として消費税の仕組みを理解していれば、経営意思決定に役立つのは間違いございません

更に、商談等で消費税の話が出たときに、何も分からないでは取引先の信頼性の欠如にも繋がりかねません。そのため、本業に差し支えがでない程度に消費税の知識修得に励む必要があると私は考えます。

※当該記事は個人の意見であり、税務判断の指針を示したものではありません。
※税務事例は多種多様であるため個別具体的な税務判断に関しては、職業専門家である我々税理士にご相談ください。

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