この記事の結論(先にお伝えします)

小規模宅地等の特例とは、自宅の土地なら330㎡までの部分の評価額が80%減額される制度です。6,600万円の土地が1,320万円として計算されます。
誰が相続するかで結論が変わります。配偶者は無条件、同居していた子は継続要件つき、別居の子は「家なき子」の6要件をすべて満たす必要があります。
税額が0円になる場合でも申告書の提出が必須の要件です。申告しなければ適用されません。
・二世帯住宅の区分登記、申告期限前の売却、貸家の3年縛りが、実務でもっとも損失の出やすい落とし穴です。

「実家の土地を相続したら、相続税はいくらになるのだろう」
「自宅の評価が8割減になる特例があると聞いたが、うちも使えるのか」

国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)では、亡くなった方(税法では「被相続人」といいます。以下この記事でも被相続人と表記します)のうち、相続税の申告対象となった割合(課税割合)は10.4%と、初めて1割を超えました。また相続財産の金額の構成比をみると、土地は30.2%で、現金・預貯金等(34.9%)に次ぐ大きさです(有価証券17.8%、家屋4.8%、その他12.3%)。相続財産の約3割を占める土地をいくらで評価するかが、相続税額を大きく左右します。

その評価額を最大8割も引き下げるのが、小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)です。会津若松市の当事務所でも、相続税申告のほぼすべての案件で検討する、もっとも減税額の大きい特例です。

ただしこの特例は要件が細かく、判定を1つ間違えると数百万円から数千万円の差が出ます。しかも「知らずに申告してしまった」あとから取り返すのは非常に困難です。

この記事では、相続税を専門とする税理士が、小規模宅地等の特例の4つの区分と限度面積、自宅の土地について誰が相続すれば使えるのかという取得者ごとの要件、老人ホーム入居や二世帯住宅の取扱い、複数の土地があるときの有利判定までを、国税庁の一次情報と検算済みの計算例をもとに解説します。

相続税そのものの計算の流れ(基礎控除・速算表・特例の全体像)は相続税・贈与税の計算の仕組み、配偶者が相続する場合の税額軽減は配偶者の税額軽減とは?1億6,000万円まで無税の使い方と注意点で詳しく解説しています。ご自身のケースの概算額は相続税かんたんシミュレーションでその場で確認できます。

小規模宅地等の特例とは?80%減額の全体像

小規模宅地等の特例とは、相続や遺贈によって取得した宅地等のうち、相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族(被相続人等)の事業の用または居住の用に供されていた宅地等について、一定の面積までの部分の評価額を大幅に減額する制度です(国税庁 No.4124)。

ここでいう「宅地等」とは土地または土地の上に存する権利のことで、借地権も含まれます。ただし対象になるのは建物または構築物の敷地に限られ、農地・採草放牧地や、不動産業者の棚卸資産である土地は対象外です。

なぜ土地だけこれほど優遇されるのか

制度の趣旨は生活基盤・事業基盤の保護です。自宅の土地に高い相続税がかかると、残された家族は住む家を売らなければ税金を払えません。事業用の土地も同じで、納税のために工場や店舗を売れば事業そのものが続けられなくなります。そこで「生活や事業に不可欠な最小限の土地」については課税価格を大きく下げる、という考え方です。

この趣旨があるため、要件はいずれも「相続後も本当にその土地を使い続けるのか」を確認するものになっています。申告期限までの居住継続・事業継続・保有継続という条件が並ぶのは、そのためです。

【一覧表】4つの区分と限度面積・減額割合

表1:小規模宅地等の特例の区分別 限度面積と減額割合(国税庁No.4124より)
区分どんな土地か限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人等が住んでいた自宅の敷地330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人等が個人事業(不動産貸付業等を除く)に使っていた土地400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等同族会社(50%超保有)に貸し、その会社が事業に使っていた土地400㎡80%
貸付事業用宅地等アパート・貸家・貸駐車場などの敷地200㎡50%

330㎡は約100坪、400㎡は約121坪、200㎡は約61坪です。会津若松市のような地方都市の一戸建てでは、330㎡以内に収まるケースが多い一方、農村部の屋敷地では330㎡を超えることも珍しくありません。限度面積を超えた部分は減額されず、通常の評価額のまま課税価格に算入されます(超えたから全部使えない、という意味ではありません)。

「アパートの土地も8割減」は誤解です。貸家やアパート、貸駐車場の敷地は200㎡まで・50%減額にとどまります。80%減額は、自宅(特定居住用)と事業用(特定事業用・特定同族会社事業用)の3区分だけです。不動産投資の営業トークで「小規模宅地の特例で8割減」と説明されることがありますが、貸付用は別枠だとご理解ください。

減額額の計算式

減額される金額 = その宅地等の評価額 × 限度面積 ÷ その宅地等の総面積 × 減額割合

たとえば自宅の敷地が400㎡・評価額8,000万円(1㎡あたり20万円)であれば、330㎡までが対象となり、減額額は8,000万円 × 330㎡ ÷ 400㎡ × 80% = 5,280万円です。課税価格に算入されるのは8,000万円 − 5,280万円 = 2,720万円となります。

土地そのものの評価方法(路線価方式・倍率方式)については、国税庁のNo.4603 路線価方式による宅地の評価およびNo.4604 倍率方式による宅地の評価をご確認ください。小規模宅地等の特例は評価額を出した後の最後の工程で適用します。

相続時精算課税で贈与を受けた土地には使えません。国税庁No.4124は、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等について、この特例の適用を受けることはできないと明記しています。「生前に自宅を精算課税で贈与しておけば、相続税でも小規模宅地の特例が使える」ということはありません。生前贈与と特例の関係は必ず事前にご相談ください。

自宅の土地は誰が相続すれば使えるのか

ここが本題です。特定居住用宅地等(330㎡・80%)は、同じ土地であっても取得する人によって適用の可否が変わります。国税庁No.4124の「特定居住用宅地等の要件」を、実務で使う順に整理します。

なお、被相続人が住んでいた宅地が2以上ある場合は、主として居住の用に供していた一の宅地等に限られます。別荘やセカンドハウスは対象になりません。

① 配偶者が取得する場合

取得者ごとの要件はありません。同居していなくても、申告期限前に売却しても、住まなくても適用できます。もっとも確実に特例が使える取得者です。

② 同居していた親族が取得する場合

相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を申告期限まで保有していることが必要です。

③ 別居の親族(家なき子)が取得する場合

下記の6要件をすべて満たす場合に限られます。1つでも欠けると適用できません。判定がもっとも難しい類型です。

④ 生計一親族の居住用宅地

被相続人と生計を一にしていた親族が住んでいた土地は、配偶者またはその生計一親族本人が取得した場合に適用できます。

配偶者が取得する場合―要件は一切ない

国税庁の表でも、被相続人の配偶者については「『取得者ごとの要件』はありません」と明記されています。申告期限前に自宅を売却しても、老人ホームに移っても、特例は使えます。

そのため実務では「とりあえず自宅は配偶者へ」という分け方が選ばれがちです。しかしこれは二次相続で不利になる典型パターンでもあります。配偶者がその自宅を相続したあと、次に子が相続するときに子が「家なき子」に該当しなければ、そのときは特例が使えず、税額が跳ね上がります。配偶者の税額軽減とあわせた一次・二次のトータル判定が必要です(配偶者の税額軽減の記事で数値比較しています)。

同居していた親族が取得する場合―「申告期限まで」がカギ

要件は居住継続保有継続の2つです。国税庁の表現をそのまま引くと、「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」となります。

実務上のポイントは「申告期限まで」という期間の意味です。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月後。つまり亡くなってから約10か月間は、住み続け、かつ売らずに持ち続ける必要があります。

申告期限の前に売ると特例が消えます。「相続した実家をすぐ売却して、代金を兄弟で分けた」というケースで特例が否認される事故が実際に起きています。ここで基準になるのは申告書を提出した日ではなく、法定の申告期限です。申告書を早めに提出しても、法定の申告期限が来る前に売却・転居してしまえば要件を満たさず、特例は使えません。逆に1日でも足りなければ全額アウトです。売却の予定がある場合は、原則として法定の申告期限を過ぎてから売るのが安全です。売却の段取りは相続不動産のワンストップ支援もあわせてご覧ください。

なお、住民票を実家に置いているだけでは「居住」とは認められません。生活の本拠が実際にそこにあったかどうかで判定されます。逆に、住民票が別でも生活実態が同居であれば認められる余地があります。単身赴任中の子が住民票だけ実家にある、といったケースは慎重な検討が必要です。

別居の親族(いわゆる「家なき子」)が取得する場合

被相続人と同居していなかった子でも、次の6要件をすべて満たせば330㎡・80%減額を使えます。持ち家のない子が実家を相続する場合を救済する規定で、実務では「家なき子特例」と呼ばれます。

表2:いわゆる「家なき子」の6要件(国税庁No.4124「特定居住用宅地等の要件」区分①3より)
No.要件実務での注意点
(1)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと海外在住で日本国籍のない相続人は対象外
(2)被相続人に配偶者がいないこと母が健在なら、子は家なき子になれない
(3)相続開始の直前において被相続人の自宅に居住していた被相続人の相続人(相続放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと実家に同居している兄弟が1人でもいるとアウト
(4)相続開始前3年以内に、日本国内にある「取得者・取得者の配偶者・取得者の三親等内の親族・取得者と特別の関係がある一定の法人」が所有する家屋(被相続人の自宅を除く)に居住したことがないこと親族の持ち家や自社所有の社宅に住んでいた場合もアウト
(5)相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことかつて自分の持ち家だった家を売って住み続ける形はアウト
(6)その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること保有継続のみ。居住は不要

特に(4)と(5)は、平成30年度改正で追加された抜け道封じの要件です。改正前は、持ち家を子や親族の会社に売って形だけ「家なき子」になる節税策が横行していました。現在は、次のような形はすべて否認されます。

  1. 持ち家を子ども名義に変えて住み続ける 取得者の三親等内の親族が所有する家屋に居住していることになり、(4)に反します。
  2. 持ち家を自分が経営する会社に売って社宅として住む 取得者と特別の関係がある法人が所有する家屋になるため、(4)に反します。
  3. 持ち家を第三者に売って、そのままリースバックで住み続ける 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことになるため、(5)に反します。

逆に、相続開始前3年以内、ずっと第三者が所有する賃貸住宅に住んでいる子であれば、他の要件を満たすことで適用できる余地があります。

「配偶者の親(義父母)名義の家なら大丈夫」は誤りです。民法725条3号は三親等内の姻族を親族としており、配偶者の父母は一親等の姻族=「三親等内の親族」に含まれます。したがって義父母名義の家に住んでいる場合は要件(4)に触れ、家なき子として適用を受けることはできません。配偶者の祖父母・兄弟姉妹なども三親等内の姻族に含まれます。誰の名義の家に住んでいるかは、登記事項証明書で必ず確認してください。
要件(6)は「保有」だけで、「居住」は求められていません。家なき子として実家を相続した子は、申告期限まで持ち続けさえすればよく、そこに引っ越して住む必要はありません。ここは同居親族の場合(居住継続が必要)との重要な違いです。実務でよく混同されるポイントです。

生計を一にしていた親族の居住用宅地

被相続人本人ではなく、被相続人と生計を一にしていた親族が住んでいた土地も対象になります。たとえば父が所有する隣接地の家に、生活費を共有している息子家族が住んでいるケースです。

この場合に適用できるのは、配偶者と、その生計一親族本人のみ。本人が取得する場合は「相続開始前から申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること」が要件です。「生計を一にする」の判定は所得税の扶養と似ていますが、同居していなくても生活費の送金があれば認められる場合があり、実務では判断が分かれやすい論点です。

【計算例】330㎡・6,600万円の自宅で税額はこう変わる

以下はすべて検算済みの数値です。わかりやすさを優先した概算で、実際の申告では課税価格の千円未満切捨てなどの端数処理を別途行います。

ケース1:相続人=子1人/自宅土地330㎡ 6,600万円・その他の財産5,000万円
基礎控除:3,000万円+600万円×1人=3,600万円
【特例を適用できた場合】
 土地の評価額:6,600万円 − 6,600万円×80%=1,320万円
 課税価格:1,320万円+5,000万円=6,320万円
 課税遺産総額:6,320万円 − 3,600万円=2,720万円
 相続税:2,720万円×15%−50万円=358万円
【特例を適用できなかった場合】
 課税価格:6,600万円+5,000万円=1億1,600万円
 課税遺産総額:1億1,600万円 − 3,600万円=8,000万円
 相続税:8,000万円×30%−700万円=1,700万円
差額:1,342万円(同じ財産でも、特例の可否だけで納税額が約4.7倍になります)

減額されるのは評価額5,280万円分ですが、そこに累進税率が乗るため、税額の差は1,342万円に達します。要件を1つ満たさなかっただけで、この金額が失われるのが小規模宅地等の特例の怖さです。

ケース2:限度面積を超える場合/自宅土地400㎡ 8,000万円(1㎡20万円)
対象となる面積:330㎡(400㎡のうち330㎡まで)
減額額:8,000万円 × 330㎡ ÷ 400㎡ × 80%=5,280万円
課税価格に算入される土地の価額:8,000万円 − 5,280万円=2,720万円
(内訳イメージ:330㎡部分 6,600万円→1,320万円、残り70㎡部分 1,400万円→1,400万円のまま)

限度面積を超えても、330㎡までの部分については満額80%減額できます。「330㎡を超えたから使えない」という誤解が多いのでご注意ください。なお、どの70㎡を残すかを選べるわけではなく、面積按分で計算します。

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老人ホームに入居していた場合

「亡くなる直前は老人ホームにいたので、自宅には住んでいなかった。特例は使えないのでは」というご相談は非常に多いです。結論は一定の要件を満たせば使えます

国税庁No.4124の(注1)は、被相続人が居住の用に供することができない一定の事由により相続開始の直前において居住していなかった場合、その事由により居住しなくなる直前の居住の用を「被相続人の居住の用」に含めると定めています。要件は次の2つです。

  1. 要介護認定・要支援認定等を受けていたこと 介護保険法19条1項の要介護認定もしくは同条2項の要支援認定を受けていた被相続人、または介護保険法施行規則140条の62の4第2号に該当していた被相続人であることが必要です。認定は入居時ではなく相続開始の直前に受けていれば足りると解されており、入居後に申請して認定を受けたケースでも適用できます。
  2. 入居先が法令で定められた施設であること 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅などが対象です。障害支援区分の認定を受けていた場合は、障害者支援施設(施設入所支援が行われるもの)または共同生活援助を行う住居も対象になります。
空き家になった自宅を「他人に貸す」と適用できなくなります。国税庁の規定は、居住の用に供されなくなった後に事業の用または新たに被相続人等以外の人の居住の用に供された場合を除くとしています。つまり老人ホーム入居後に実家を第三者へ賃貸してしまうと、特定居住用宅地等としての特例は使えません(貸付事業用宅地等として200㎡・50%を検討することになります)。一方、被相続人と生計を一にしていた親族が引き続きその家屋に住んでいる場合は、その居住も「被相続人等の居住」に含まれるため問題ありません。ただし「親族だから、無償だから安全」ではありません。生計を別にしていた親族が新たに住み始めた場合は、無償であっても「被相続人等以外の人の居住の用」に該当し、特例が使えなくなります。実家の管理をどうするかは、税額に直結する意思決定です。

あわせて注意したいのが、有料老人ホームであっても老人福祉法上の届出をしていない無届施設の場合です。この場合は「同法29条1項に規定する有料老人ホーム」に該当しないおそれがあり、適用が否認されるリスクがあります。入居先の種類は、契約書や施設の重要事項説明書で確認してください。

「うちのケースは使えるのか」を、資料を見て判定します

会津若松市の玉木歩税理士事務所(アスミル会計相続パートナーズ)が、登記事項証明書・住民票・施設の契約書などを拝見し、小規模宅地等の特例の適用可否と減額額を具体的に判定します。
遺産分割協議書に押印する前、そして実家を売却する前にご相談いただくと、選べる選択肢が最も多く残ります。初回のご相談は無料です。

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二世帯住宅は「区分登記」で結論が変わる

二世帯住宅は小規模宅地等の特例でもっとも結論が分かれるテーマです。最大の分岐点は建物が区分所有建物である旨の登記(区分登記)をされているかどうかですが、これだけで結論が決まるわけではありません。誰が敷地を取得するか、申告期限までの居住・保有の状況、被相続人と生計を一にしていたかどうかによっても結論は変わります。

国税庁No.4124の(注2)(注3)は、「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」=区分所有建物である旨の登記がされている建物を、それ以外の建物と明確に区別しています。

表3:二世帯住宅の登記形態による特例の適用範囲の違い
登記の形態特例の対象となる範囲内部で行き来できるか
単独登記(親名義のみ)敷地全体(被相続人または親族の居住部分を含む)関係なし。玄関が別々でも可
共有登記(親子の共有)敷地全体関係なし
区分登記(1階=親、2階=子など)被相続人の居住部分に対応する敷地のみ関係なし

平成26年1月1日以後の相続からは、建物内部で行き来できるかどうかは要件になっていません。玄関が完全に別で、内部でつながっていない完全分離型の二世帯住宅であっても、区分登記されていなければ敷地全体が対象になります。「行き来できないから使えない」という古い情報が今もインターネット上に残っていますのでご注意ください。

ケース3:二世帯住宅の敷地300㎡・7,500万円(1㎡25万円)/相続人=子1人・その他の財産3,000万円
基礎控除:3,000万円+600万円×1人=3,600万円
【区分登記なし(単独登記・共有登記)】
 減額額:7,500万円×80%=6,000万円(300㎡<330㎡なので全体が対象)
 課税価格:7,500万円−6,000万円+3,000万円=4,500万円
 相続税:(4,500万円−3,600万円)×10%=90万円
【区分登記あり(被相続人の居住部分が1/2)】
 減額額:7,500万円×1/2×80%=3,000万円
 課税価格:7,500万円−3,000万円+3,000万円=7,500万円
 相続税:(7,500万円−3,600万円)×20%−200万円=580万円
差額:490万円(登記の形式だけで税額が約6.4倍)
区分登記は生前に「合併登記」で解消できます。区分登記されている二世帯住宅は、区分建物の合併登記や、子の持分を親に贈与して単独名義にするなどの方法で解消できる場合があります。ただし登記の変更には登録免許税や不動産取得税、贈与税の検討が必要で、相続が始まってからでは間に合いません。二世帯住宅を建てるとき、住宅ローン控除を各自で使うために区分登記を勧められることがありますが、相続税まで含めた損得は必ず事前に比べてください。

なお、区分登記があっても子が「生計を一にする親族」に該当する場合は、子の居住部分の敷地についても特定居住用宅地等として適用できる余地があります。生活費を共有しているかどうかで結論が変わりますので、諦める前にご相談ください。

貸家・アパートの土地と「3年縛り」

アパート・貸家・貸駐車場などの敷地は貸付事業用宅地等として、200㎡まで50%減額の対象になります。ここでいう「貸付事業」には、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業のほか、準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で、相当の対価を得て継続的に行うもの)も含まれます。

要件は次のとおりです。

  1. 事業承継要件 被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつその申告期限までその貸付事業を行っていること。生計一親族の貸付事業の場合は、相続開始前から申告期限まで貸付事業を行っていること。
  2. 保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。
相続開始前3年以内に貸し始めた土地は対象外です(3年縛り)。国税庁No.4124は、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(3年以内貸付宅地等)を対象から除外しています。「相続が近いから節税のために駐車場を作った」「空き家を急いで賃貸に出した」というケースは適用できません。
ただし例外があります。相続開始の日まで3年を超えて引き続き「特定貸付事業」(貸付事業のうち準事業以外のもの=事業的規模の貸付け)を行っていた被相続人等が、その特定貸付事業の用に供した宅地等については、3年以内に貸し始めた土地でも対象になります。もともと本格的に不動産賃貸業を営んでいた方が物件を買い増した場合は救済される、という趣旨です。

「事業的規模」の目安は、所得税で使われるいわゆる5棟10室基準(独立家屋5棟以上、またはアパート等10室以上)が参考になります。アパート1棟だけ、駐車場1か所だけという規模では準事業と判定される可能性が高く、3年縛りの例外は使えないとみておくのが安全です。

また、無償で貸している土地(使用貸借)は「相当の対価」を得ていないため貸付事業に該当せず、特例の対象になりません。親族に固定資産税相当額だけで貸しているケースは要注意です。

事業用の土地(400㎡・80%)

個人事業や同族会社の事業に使っていた土地は、400㎡まで80%減額という自宅よりも大きな枠が用意されています。

特定事業用宅地等

被相続人等が事業(不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業を除く)に使っていた土地です。要件は事業承継要件(被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限までその事業を営んでいること。生計一親族の場合は相続開始の直前から申告期限まで事業を営んでいること)と保有継続要件(申告期限まで保有)です。

こちらにも3年縛りがあります。相続開始前3年以内に新たに事業に使い始めた土地(3年以内事業宅地等)は対象外です。ただし、一定の規模以上の事業を行っていた場合は除外されません。判定式は次のとおりです。

その事業に使っていた一定の資産のうち被相続人等が有していたものの相続開始時の価額の合計額
÷ 新たに事業の用に供された宅地等の相続開始時の価額 ≧ 15%

「一定の資産」とは、その宅地上の建物(附属設備を含む)または構築物、およびその宅地上で行う事業に使っていた減価償却資産です。土地の価額に対して建物や設備が15%以上あれば、実質的な事業と認められるという考え方です。

特定同族会社事業用宅地等

相続開始の直前から申告期限まで、一定の法人の事業(不動産貸付業等を除く)に使われていた土地です。「一定の法人」とは、相続開始の直前において被相続人および被相続人の親族等が発行済株式の総数または出資の総額の50%超を有している法人(申告期限において清算中の法人を除く)をいいます。

要件は法人役員要件(相続税の申告期限においてその法人の役員であること。法人税法2条15号の役員で、清算人は除く)と保有継続要件です。取得者自身が役員でなければならない点に注意してください。土地を相続した子が役員になっていない場合は、申告期限までに役員に就任する必要があります。

なお、法人に土地を貸している以上、相当の対価による賃貸借である必要があります。無償で貸していると、そもそも土地の評価が自用地評価になるうえ特例の適用も難しくなります。法人の事業構造と土地の貸借関係は、当事務所のサービスで顧問先の法人税務とあわせて整理しています。

土地が複数あるときの併用計算と有利判定

自宅とアパート、自宅と店舗など複数の土地がある場合、どれにいくら特例を使うかを自分で選択します。ここで選び方を間違えると、本来使えた減額額を取り逃がします。

併用のルール

国税庁No.4124の「限度面積の判定」は次の2パターンです。

  1. 貸付事業用宅地等がない場合―完全併用できる 特定事業用等宅地等(特定事業用+特定同族会社事業用)は400㎡以下、特定居住用宅地等は330㎡以下。両方を選択する場合は合計730㎡まで使えます。互いに枠を食い合いません。
  2. 貸付事業用宅地等がある場合―200㎡に換算して按分する 次の算式を満たす範囲でしか選択できません。
(特定事業用等①+②)× 200/400 + 特定居住用⑥ × 200/330 +(貸付事業用③+④+⑤) ≦ 200㎡

つまり、貸付事業用の土地を1㎡でも選択に含めると、全体が「200㎡の共通枠」の取り合いになります。自宅330㎡をフルに使うと 330×200/330=200㎡ で枠を使い切り、貸付用には1㎡も残りません。

「枠1㎡あたりの減額効率」で比べる

どれを優先すべきかは、共通枠1㎡を使ったときにいくら減額できるかで比べれば一目でわかります。

表4:共通枠200㎡を1㎡使ったときの減額効率(土地の1㎡あたり評価額=単価とした場合)
区分1㎡あたりの枠消費減額割合枠1㎡あたりの減額額
特定事業用等宅地等200/400=0.580%単価 × 1.6
特定居住用宅地等200/330≒0.60680%単価 × 1.32
貸付事業用宅地等1.050%単価 × 0.5

この表から、実務で使える判定の目安が導けます。

  1. 貸付事業用を優先すべきなのは、単価が自宅の2.64倍を超えるときだけ 1.32 ÷ 0.5 = 2.64。アパートの土地の単価が自宅の2.64倍を超えていなければ、自宅を優先したほうが有利です。都心のアパートと地方の実家という組み合わせでなければ、まず自宅優先で考えます。
  2. 事業用の土地は減額効率の係数がもっとも高い 係数が単価×1.6でもっとも高く、しかも貸付用がなければ自宅330㎡と完全併用できます。ただし「事業用だから常に最優先」ではありません。限度面積の共通枠を取り合う場面では、必ず1㎡あたりの評価額×係数で比べてください。事業用の土地の単価が低ければ、自宅を優先したほうが有利になることがあります。
  3. 自宅が330㎡未満なら、余った枠を貸付用に回せる たとえば自宅165㎡なら枠消費は100㎡。残った100㎡を貸付事業用に使えます。
ケース4:自宅165㎡(30万円/㎡=4,950万円)+アパート土地300㎡(15万円/㎡=4,500万円)
選択A:自宅165㎡+アパート100㎡
 枠消費:165㎡×200/330=100㎡ + 100㎡=200㎡(ちょうど上限)
 減額額:165㎡×30万円×80%=3,960万円 + 100㎡×15万円×50%=750万円=4,710万円
選択B:アパート200㎡のみ
 減額額:200㎡×15万円×50%=1,500万円
選択Aが3,210万円有利
ケース5:逆転する場合/自宅330㎡(10万円/㎡)+アパート土地200㎡(40万円/㎡)
アパートの単価40万円 > 自宅の単価10万円×2.64=26.4万円 → 貸付優先が有利
選択A:自宅330㎡のみ:330㎡×10万円×80%=2,640万円
選択B:アパート200㎡のみ:200㎡×40万円×50%=4,000万円
選択Bが1,360万円有利
配偶者居住権が設定されている場合は面積を按分します。国税庁No.4124の(注)は、特例を適用する宅地等が配偶者居住権の目的となっている建物の敷地、またはその敷地を配偶者居住権に基づき使用する権利である場合、その宅地等の面積に、敷地の価額または権利の価額が両者の合計額に占める割合を乗じた面積を、特例を適用する面積とみなして限度面積を計算すると定めています。配偶者居住権を使った分割案では、限度面積の計算が一段複雑になります。

適用の手続き―申告書の提出が必須の要件

小規模宅地等の特例は申告書に記載して初めて適用される制度です。国税庁No.4124は、特例の適用を受けるためには相続税の申告書にその旨を記載し、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があると定めています。

「特例を使えば0円だから申告不要」は最悪の誤解です。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減で税額が0円になるケースは、相続税の申告が必要な典型パターンです。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を所轄する税務署へ申告書を提出してください(提出期限が土日祝日にあたる場合はその翌営業日が期限です)。なお会津若松税務署の管轄は、会津若松市、耶麻郡のうち磐梯町・猪苗代町、河沼郡、大沼郡です(会津美里町は大沼郡に含まれます)。喜多方市・耶麻郡西会津町などは喜多方税務署の管轄ですので、被相続人の住所地の所轄税務署を国税庁ホームページでご確認ください。無申告のまま調査で指摘されると、特例が使えないうえに無申告加算税・延滞税まで課されます。申告が必要かどうかの判定は相続税のQ&A一覧もご覧ください。

申告・判定に使用する主な書類

表5:小規模宅地等の特例の申告・判定に使用する主な書類
書類内容・入手先
第11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)選択した宅地等と限度面積の計算を記載します。この特例等の対象となり得る宅地等を取得した人が2人以上いる場合は、選択について全員の同意が必要で、令和8年分の様式では「第11・11の2表の付表2(適用にあたっての同意及び特定計画山林についての課税価格の計算明細書)」に同意した人全員の氏名を記載します
遺産分割協議書の写し(または遺言書の写し)相続人全員の印鑑証明書を添付
戸籍謄本等または法定相続情報一覧図の写し市区町村・法務局
登記事項証明書・固定資産税評価証明書・地積測量図等法務局・市役所。二世帯住宅では区分登記の有無を必ず確認
住民票の写し・戸籍の附票の写し同居の事実、家なき子の3年間の居住歴の確認に使用
賃貸借契約書(家なき子の場合)相続開始前3年以内に自己または一定の親族等の所有家屋に居住していないことの疎明
介護保険の被保険者証の写し・施設の契約書(老人ホームの場合)要介護・要支援認定と施設種別の確認

特に見落としが多いのが選択同意です。国税庁No.4124は、特例の対象となり得る宅地等を取得した相続人等が2人以上いる場合、選択について全員が同意していることを要件としています。「自分の分だけ特例を使う」という申告はできません。相続人間で対立があるケースでは、この同意が取れずに特例そのものが使えなくなることがあります。

申告期限までに分割できないとき

原則として、申告期限までに分割されていない宅地等には特例を適用できません。ただし救済措置があります。

  1. 「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付する 未分割のまま法定相続分で申告し、この書類を添付します。添付を忘れると救済されません。
  2. 申告期限から3年以内に分割する 分割が成立したら、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求を行い、納めすぎた相続税の還付を受けます。詳しくは国税庁No.4208 相続財産が分割されていないときの申告をご確認ください。
期限管理が命です。分割見込書の添付漏れ、更正の請求の4か月という短い期限、いずれも「知らなかった」では通りません。訴訟等のやむを得ない事情で3年以内に分割できない場合は、別途「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を期限内に提出する必要があります。

実務で多い7つの失敗パターン

  1. 特例で0円になるから申告しなかった もっとも多く、もっとも高くつく失敗です。申告書の提出が適用要件のため、無申告では特例が認められません。
  2. 申告期限の前に実家を売った・引っ越した 同居親族が取得する場合は居住継続と保有継続、家なき子は保有継続が要件です。10か月を待たずに売却・転居すると全額が消えます。売却は、申告書の提出日ではなく法定の申告期限を過ぎてからが原則です。早めに申告書を出しても、申告期限前の売却・転居は要件を満たしません。
  3. 二世帯住宅を区分登記していた 被相続人の居住部分に対応する敷地だけが対象になり、減額額が半減します。上のケース3では税額が約6.4倍になりました。生前の合併登記で解消できる場合があります。
  4. 家なき子のつもりが要件(4)(5)に触れていた 持ち家を子や自社に売って住み続ける形、リースバックはいずれも否認されます。平成30年度改正で封じられた論点です。
  5. 老人ホーム入居後に空き家を賃貸に出した 被相続人等以外の人の居住の用に供された場合は、特定居住用宅地等として適用できません。管理のつもりの賃貸が数百万円の増税になります。
  6. 相続直前にアパートや駐車場を始めた 3年以内貸付宅地等として対象外です。事業的規模で3年超営んでいた場合の例外を除きます。
  7. 限度面積の有利選択を誤った/選択同意が取れなかった 複数の土地がある場合、表4の効率で比較しないと数千万円を取り逃がします。また取得者が2人以上いる場合は全員の同意が必要です。

申告期限まで10か月。判定と有利選択は早いほど選択肢が残ります

会津若松市の玉木歩税理士事務所(アスミル会計相続パートナーズ)が、登記事項証明書と住民票、そしてご家族の住まいの状況をお伺いして、小規模宅地等の特例の適用可否と、複数の土地がある場合の最も有利な選択を試算します。
司法書士・行政書士・不動産の専門家と連携し、名義変更から売却までワンストップで対応します。料金表も事前に公開しています。初回のご相談は無料です。

無料相談を申し込む お電話 0242-93-9373

会津若松の土地事情と小規模宅地等の特例

会津若松市で相続税申告をお手伝いしていて感じるのは、この地域は小規模宅地等の特例の効き方に独特の傾向があるということです。

  1. 市街地でも宅地面積が330㎡以内に収まるケースが多い 330㎡という限度は面積の基準ですので、路線価の高低とは関係ありません。ただ当地域では、市街地の住宅地の宅地面積が330㎡=約100坪以内であるケースが多く、宅地の全体を満額80%減額できることが少なくありません。なお令和8年分の路線価では、会津若松市の最高路線価である中町・神明通りが1㎡あたり5万3,000円(前年から1.9%下落)で、県内主要10地点のうち唯一の下落地点でした。単価が低い分、同じ面積でも減額額そのものは都市部より小さくなります。
  2. 一方で屋敷地が広く、限度面積を超えることも多い 郊外や農村部の屋敷地は500㎡、1,000㎡に及ぶことがあります。この場合は330㎡分だけが80%減額となり、残りは通常評価です。広い土地では地積規模の大きな宅地の評価や、不整形地・無道路地の補正など、特例以外の評価減も併せて検討する価値があります。
  3. 倍率方式の地域が広い 路線価が付されていない地域では固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。まず国税庁の財産評価基準書でご自宅の所在地が路線価地域か倍率地域かを確認してください。
  4. 空き家になった実家の扱いが分岐点になる 親が施設に入り実家が空き家になったとき、「傷むから誰かに貸そう」という判断が特例を失わせます。空き家のまま適切に管理する(管理を専門業者に委託する)といった選択肢のほうが税務上は安全です。生計を別にする親族に住んでもらう場合も「被相続人等以外の人の居住の用」に該当しますので、賃貸に出す場合と同様に事前の確認が必要です。
  5. 農地・生産緑地との組み合わせ 会津地域では宅地に農地が隣接しているケースが多く、農地の納税猶予との併用可否や、屋敷地と農地の境界の認定が問題になります。相続税申告のサービス案内もご覧ください。

よくあるご質問

マンションでも小規模宅地等の特例は使えますか?

使えます。分譲マンションの敷地は敷地利用権(土地の共有持分)として評価され、これは「土地の上に存する権利」に含まれます。持分に対応する面積が330㎡以内であれば全体が80%減額の対象です。一般的な分譲マンションの1戸あたりの敷地持分は数十㎡程度ですので、限度面積を超えることはほとんどありません。要件(誰が取得するか、居住継続・保有継続)は一戸建てと同じです。

借地に建てた自宅の場合はどうなりますか?

対象になります。国税庁No.4124の「宅地等」は土地または土地の上に存する権利と定義されており、借地権も含まれます。したがって借地権の評価額に対して80%減額が適用されます。ただし建物が被相続人等の居住の用に供されていたことなど、他の要件は同じように判定します。

相続人が複数で自宅を共有で相続した場合はどうなりますか?

共有でも適用できますが、取得者ごとに要件を判定します。国税庁No.4124は「それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続または遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限る」としています。たとえば同居していた長男が1/2、遠方に持ち家がある次男が1/2を取得した場合、長男の持分1/2の部分だけが80%減額の対象となり、次男の持分は減額されません。共有にする場合は、要件を満たす人の持分を大きくするほど有利です。

店舗兼住宅(1階が店舗、2階が自宅)はどう扱いますか?

敷地を用途ごとに按分して、居住用部分は特定居住用宅地等(330㎡・80%)、事業用部分は特定事業用宅地等(400㎡・80%)として、それぞれの要件で判定します。貸付事業用の土地が他にない場合は両者を完全併用できるため、建物全体が特例の対象になることも珍しくありません。按分は原則として床面積比で行います。店舗部分を子が承継し、居住部分を配偶者が取得するといった組み合わせも可能です。

庭や畑、駐車スペースも「宅地」に含まれますか?

建物の敷地として一体利用されている庭や、自家用の駐車スペースは、通常その宅地の一部として一体で評価され、特例の対象に含まれます。一方、明確に分離された農地・採草放牧地は対象外です(国税庁No.4124の注記)。また、アスファルト舗装などの構築物がない青空駐車場を他人に貸している場合は、建物または構築物の敷地に該当しないため貸付事業用宅地等としても対象外となる点に注意が必要です。

申告期限を過ぎてから特例の適用を忘れていたことに気づきました。今からできますか?

この特例には申告要件があり、当初申告で「特例の適用を受ける旨」を記載していなかった場合、単なる適用漏れを理由に、あとから更正の請求で適用を受けることは原則としてできません。措法69条の4第7項が対象としているのは期限内申告書・期限後申告書・修正申告書で、更正の請求書は含まれていないためです。「5年以内なら自由に追加できる」という制度ではありませんので、ご注意ください。
例外的に認められるのは、おおむね次の場合に限られます。
(1) 未分割で申告した際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しており、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求をする場合
(2) 当初申告で要件を満たさない土地を選択していたなど、当初の選択に法令上の誤りがあった場合
(3) 記載や添付がなかったことについて、やむを得ない事情があると税務署長が認めた場合(措法69条の4第8項)
また、税額が増える修正申告を行う際に、あわせて特例を適用することは可能です。期限内申告をしていない(無申告だった)場合も、期限後申告書で特例の適用を受けられますが、無申告加算税・延滞税の負担が生じます。いずれも判断が難しい領域ですので、気づいた時点でお早めに税理士へご相談ください。

特例を使って0円になれば、税務調査は来ませんか?

そうとは限りません。むしろ小規模宅地等の特例は調査で重点的に確認される項目です。同居の実態、住民票と生活実態の一致、区分登記の有無、老人ホームの施設種別、申告期限までの保有状況などが確認されます。税額が0円であっても、特例が否認されれば本税が発生します。適用の根拠となる資料(住民票、公共料金の領収書、施設の契約書など)は申告時に整えて保存しておいてください。

まとめ

  1. 自宅の土地は330㎡まで80%減額 6,600万円の土地が1,320万円になります。事業用は400㎡・80%、貸付用は200㎡・50%です。
  2. 誰が相続するかで結論が変わる 配偶者は無条件。同居親族は居住継続+保有継続。別居の子は家なき子の6要件をすべて満たす必要があります。
  3. 申告期限までの10か月は「動かない」が原則 売却・転居は法定の申告期限を過ぎてから。申告書を早めに提出しても、申告期限前に売却・転居すれば要件を満たしません。分割が間に合わないときは分割見込書の添付を忘れないでください。
  4. 二世帯住宅の区分登記、空き家の賃貸、3年以内の貸付開始は要注意 いずれも生前の判断で結果が変わります。相続が始まってからでは手遅れになる論点です。
  5. 土地が複数あるなら「枠1㎡あたりの減額効率」で比べる 貸付用を優先すべきなのは、単価が自宅の2.64倍を超える場合だけです。

小規模宅地等の特例は、相続税の負担をもっとも大きく左右する制度です。そしてその多くは、生前の準備と申告期限までの行動で結果が決まります。「実家をどうするか」で迷っている段階でご相談いただければ、選べる選択肢はぐっと広がります。

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この記事の執筆者

税理士 玉木 歩(東北税理士会 会員)/アスミル会計相続パートナーズ・玉木歩税理士事務所 代表
福島県会津若松市を拠点に、相続税申告・生前対策・法人税務を専門とする税理士。司法書士・行政書士・不動産の専門家と連携し、相続手続をワンストップで支援しています。

〒965-0037 福島県会津若松市中央1丁目5-29 B.Step201/TEL 0242-93-9373(受付 平日9:00〜18:00)
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法令基準日:2026年7月30日 / 最終更新日:2026年7月30日

出典・参考資料

【免責事項】本記事は、法令基準日(2026年7月30日)現在に確認できる相続税法・租税特別措置法等および国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。実際の適用可否・税額は、財産の内容やご家族の状況によって異なります。個別の事案については、必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。

税制は毎年改正されます。本記事は改正内容を確認のうえ随時更新しますが、ご覧いただく時点の法令と異なる場合があります。最新の情報は国税庁ホームページ等でもご確認ください。

本記事の計算例はわかりやすさを優先した概算です。実際の相続税申告では、各人の課税価格を千円未満切捨てで算出し、納付税額を100円未満切捨てとするなど、国税庁の申告書様式に従った端数処理を別途行います。土地の1㎡あたり単価を用いた計算例は、奥行価格補正・不整形地補正などの画地調整を考慮していません。

本記事は一般的な解説を目的としたものであり、財産評価や相続税・贈与税の申告の根拠資料としてご利用いただくことはできません。また、税務調査や税務署への説明において、本記事を根拠として援用することもできません。本記事の記載に基づきお客様ご自身が判断・実行された結果について、当事務所は責任を負いかねます。実際の財産評価および申告にあたっては個別の資料に基づく検討が必要ですので、必ず税理士にご依頼またはご相談ください。