この記事の結論(先にお伝えします)

配偶者の税額軽減とは、配偶者が取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までなら、配偶者に相続税がかからない制度です。
税額が0円でも相続税の申告書の提出が必須です。申告しなければ適用されません。
枠を使い切るのは、多くの場合むしろ損です。二次相続まで含めると数千万円の差が出ます(本記事の比較表で検証)。

「配偶者が相続すれば1億6,000万円まで相続税はかからないと聞いたけれど、本当?」
「夫の財産は全部妻が相続したほうが得なのでは?」

国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)では、亡くなった方のうち相続税の申告対象となった割合(課税割合)は10.4%と、初めて1割を超えました。相続税はもはや一部の資産家だけの問題ではありません。

会津若松市の当事務所にも、相続税の無料相談でこのご質問を毎月いただきます。結論は上のとおりで、「1億6,000万円まで無税」は事実です。ただし配偶者に寄せすぎると、次の相続(二次相続)で税額が跳ね返り、かえって数千万円多く納めることになります。

この記事では、相続税を専門とする税理士が、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の仕組みと計算方法、適用の要件と必要書類、そして実務でもっとも損失が出やすい二次相続とのトータル比較を、国税庁の一次情報と検算済みの計算例をもとに解説します。

相続税そのものの計算の流れ(基礎控除・速算表・特例の全体像)は相続税・贈与税の計算の仕組みで詳しく解説しています。ご自身のケースの概算額は相続税診断(無料シミュレーション)で、その場で確認できます。

配偶者の税額軽減とは?制度の全体像

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までなら、配偶者に相続税がかからないという制度です(国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」)。相続税法第19条の2に定められた税額控除で、実務では「配偶者控除」「配偶者の税額軽減の特例」とも呼ばれます。

この制度が設けられている理由は、大きく3つあります。第一に、夫婦の財産は長年の協力によって築かれたものであるという考え方。第二に、配偶者の老後の生活保障。第三に、同一世代間の財産移転であり、通常はそれほど遠くない将来に次の相続が発生するという事情です。3つ目の理由が、後述する「二次相続」の論点に直結します。

制度のポイント

・軽減の枠は「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額
婚姻期間の長短は問わない(婚姻届が出ていれば1年未満でも適用可)
税額が0円になっても、相続税の申告書の提出が必須
隠蔽または仮装していた財産は、この制度の対象に含まれない

「相続税は配偶者なら無税」の正しい意味

よくある誤解が、「配偶者が1億6,000万円を相続すれば、家族全体の相続税が0円になる」というものです。これは誤りです。配偶者の税額軽減は、あくまで配偶者自身が負担する相続税額を減らす制度であり、お子さんなど他の相続人が負担する相続税はまったく減りません。

また、「1億6,000万円までなら申告も不要」も誤りです。この制度は申告書を提出して初めて適用されるため、軽減の結果として納税額が0円になる場合でも、申告期限内に申告書を提出しなければなりません。ここを自己判断で省略してしまい、後日の税務調査で軽減が受けられず本税と加算税を課された、というご相談は少なくありません。申告が必要かどうかの判定基準は相続税のQ&A一覧でも解説しています。

「無税=申告不要」ではありません。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例によって税額が0円になるケースは、相続税の申告が必要な典型パターンです。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を所轄する税務署(会津若松市・喜多方市・会津美里町・猪苗代町などの多くは会津若松税務署)へ申告書を提出してください(提出期限が土日祝日にあたる場合は、その翌営業日が期限となります)。なお、申告が必要かどうかを判定するときの「課税価格の合計額」には、相続・遺贈で取得した財産から債務・葬式費用を差し引いた額に加えて、相続時精算課税の適用財産と、加算対象期間内の暦年贈与財産(生前贈与加算)も含めて判定します。加算対象期間の区分はよくあるご質問の表で確認できます。

内縁関係・事実婚は適用できるか

適用できません。国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」でも、内縁関係の人は相続人に含まれないと明記されています。配偶者の税額軽減は「戸籍上の配偶者」に限られ、事実婚のパートナーが遺贈で財産を取得した場合は、軽減が使えないうえに相続税額の2割加算の対象になります。逆に、婚姻期間が数か月であっても婚姻届が提出されていれば適用可能で、期間による制限はありません。

いくらまで無税?軽減額の計算方法

軽減額は「配偶者が実際に取得した財産」を基礎に、次の算式で計算します。

軽減額 = 相続税の総額 × 次の①②のうち少ない金額 ÷ 課税価格の合計額
① 課税価格の合計額 × 配偶者の法定相続分(1億6,000万円未満なら1億6,000万円)
② 配偶者が実際に取得した課税価格

ややこしく見えますが、実務上の判断は次の2ステップに整理できます。

  1. 軽減の上限枠を決める 「1億6,000万円」と「遺産総額×配偶者の法定相続分」を比べ、多いほうが枠になります。相続人が配偶者と子の場合、遺産総額が3億2,000万円以下なら枠は1億6,000万円です。
  2. 実際の取得額と枠を比べる 配偶者の取得額が枠以内なら、配偶者の相続税は全額0円。枠を超える場合は、超えた部分に対応する相続税だけが配偶者の負担になります。

配偶者の法定相続分(民法)

表1:相続人の組み合わせ別の配偶者の法定相続分と、軽減の枠が1億6,000万円を超える遺産総額の目安
相続人の組み合わせ配偶者の法定相続分枠が1億6,000万円を超える遺産総額
配偶者と子1/23億2,000万円超
配偶者と直系尊属(父母等)2/32億4,000万円超
配偶者と兄弟姉妹3/4約2億1,334万円超
配偶者のみすべて全額が枠になる

子がおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は3/4です。したがって遺産総額が約2億1,334万円を超えるあたりから、枠は1億6,000万円ではなく法定相続分相当額のほうが大きくなります。「うちは1億6,000万円が上限」と思い込まないことが大切です。なお、兄弟姉妹が財産を取得すると相続税額の2割加算が適用されます。

相続税の速算表(参考)

表2:相続税の速算表(国税庁「No.4155 相続税の税率」)
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超 3,000万円以下15%50万円
3,000万円超 5,000万円以下20%200万円
5,000万円超 1億円以下30%700万円
1億円超 2億円以下40%1,700万円
2億円超 3億円以下45%2,700万円
3億円超 6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。基礎控除と法定相続人の数え方は相続税・贈与税の計算の仕組みで詳述しています。

【早見表】遺産総額別・配偶者の納税額

「配偶者が全部相続したら、いくら払うのか」を遺産総額別にまとめました。相続人は配偶者と子1人(基礎控除4,200万円)を前提としています。

表3:【早見表】遺産総額別・配偶者が全部相続した場合の相続税額(相続人は配偶者と子1人)
正味の遺産額相続税の総額軽減の枠配偶者が全部相続した場合の納税額
8,000万円470万円1億6,000万円0円
1億円770万円1億6,000万円0円
1億5,000万円1,840万円1億6,000万円0円
2億円3,340万円1億6,000万円668万円
3億円6,920万円1億6,000万円3,229万円
4億円1億920万円2億円5,460万円
6億円1億9,710万円3億円9,855万円

ポイントは2つです。①遺産総額1億6,000万円以下なら、配偶者が全部相続すれば配偶者の相続税は0円(子も取得しなければ家族全体で0円)。②遺産総額が枠を超えると、配偶者が全部相続しても無税にはなりません。「全部妻が相続すればタダ」という思い込みが、納税資金の準備不足につながります。

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【計算例】ケース別に税額を出してみる

ケース1:遺産1億円/相続人=配偶者と子2人/配偶者が全部取得
基礎控除:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税遺産総額:1億円−4,800万円=5,200万円
法定相続分に応ずる取得金額:配偶者5,200万円×1/2=2,600万円、子は各 5,200万円×1/4=1,300万円
相続税の総額(速算表を適用)
 配偶者:2,600万円×15%−50万円=340万円(1,000万円超 3,000万円以下の区分)
 子(各):1,300万円×15%−50万円=145万円 → 145万円×2人=290万円
 合計:340万円+290万円=630万円
軽減の枠:max(1億6,000万円、1億円×1/2=5,000万円)=1億6,000万円
配偶者の取得額1億円 ≦ 枠1億6,000万円 → 配偶者の納税額 0円
家族全体の納税額:0円(ただし申告書の提出は必須)
税率の区分と端数処理にご注意ください。速算表は「法定相続分に応ずる取得金額」に当てはめます。上の例では課税遺産総額が5,200万円でも、各人の法定相続分に応ずる取得金額は2,600万円・1,300万円なので、適用するのは「1,000万円超 3,000万円以下:15%・控除50万円」です(課税遺産総額そのものに「5,000万円超:30%・控除700万円」を当てはめるのは誤りです)。また、実務では課税価格は1,000円未満切捨て、納付すべき税額は100円未満切捨てとして計算します。本記事の計算例はいずれも端数が生じない金額になるよう前提を置いています。
ケース2:遺産2億円/相続人=配偶者と子2人/配偶者1/2・子各1/4
基礎控除:4,800万円 → 課税遺産総額:1億5,200万円
相続税の総額:配偶者7,600万円→1,580万円、子3,800万円→560万円×2人=1,120万円 → 合計2,700万円
配偶者の按分税額:2,700万円×1億円/2億円=1,350万円
軽減の枠:max(1億6,000万円、1億円)=1億6,000万円 → 取得額1億円は枠内 → 配偶者0円
子の納税額:2,700万円−1,350万円=1,350万円(1人675万円)
家族全体の納税額:1,350万円
ケース3:遺産4億円/相続人=配偶者と子1人/配偶者が全部取得
基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円 → 課税遺産総額:3億5,800万円
相続税の総額:配偶者・子それぞれ1億7,900万円→5,460万円 → 合計1億920万円
軽減の枠:max(1億6,000万円、4億円×1/2=2億円)=2億円
軽減額:1億920万円×2億円/4億円=5,460万円
配偶者の納税額:1億920万円−5,460万円=5,460万円

全部を配偶者が相続しても無税にはなりません。枠(この例では2億円)を超えた部分には、通常どおり相続税がかかります。相続財産の多くが自宅や賃貸不動産という会津地域のケースでは、相続サポート:ワンストップでの安心解決法でご紹介しているとおり、納税資金の確保まで含めた設計が不可欠です。

適用を受けるための要件と必要書類

3つの要件

① 戸籍上の配偶者であること

婚姻届が提出されていることが必要です。婚姻期間の長短は問いませんが、内縁・事実婚は対象外です。

② 申告期限までに遺産分割が確定していること

申告期限までに分割されていない財産は軽減の対象になりません。遺言書や遺産分割協議で配偶者の取得財産が確定している必要があります(例外は次章)。

③ 相続税の申告書を提出すること

軽減の明細を記載した申告書の提出が必須です。税額0円でも提出しなければ適用されません。

必要書類

  1. 相続税の申告書(第5表 配偶者の税額軽減額の計算書) 軽減の明細を記載します。第1表の「配偶者の税額軽減額」欄への転記漏れが、実務では意外に多い誤りです。
  2. 戸籍謄本等 被相続人と配偶者の身分関係を確認する書類です。被相続人の全戸籍または法定相続情報一覧図の写しを添付します。
  3. 配偶者の取得財産が分かる書類 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写しです。遺産分割協議書の写しには、相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)の添付が必要です。
  4. 提出先は所轄税務署 被相続人の最後の住所地を所轄する税務署へ提出します。書類収集の手順は当事務所でご案内しますので、相続相談のページで申告までの5ステップをご確認ください。
隠蔽・仮装した財産は軽減の対象外です。国税庁も「この制度の対象となる財産には、隠蔽または仮装されていた財産は含まれません」と明記しています。名義預金や海外資産をあえて申告から外した場合、税務調査で発見されるとその財産には配偶者の税額軽減が一切使えず、重加算税(35%または40%)まで課されることになります。財産の申告漏れは、配偶者にとって二重の打撃になります。

未分割のまま申告期限が来たときの対処法

相続人間で話し合いがまとまらず、申告期限(10か月)までに遺産分割が確定しないことがあります。この場合、原則として配偶者の税額軽減は使えず、いったん法定相続分で取得したものとして計算した相続税を全額納付することになります。ただし、次の手続で救済されます。

  1. 申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する 未分割のまま申告する際、この書類を添付しておけば、後日の分割で軽減を受ける道が残ります。添付を忘れると、原則として軽減は受けられません。
  2. 申告期限から3年以内に分割する 期限までに分割されなかった財産について、申告期限から3年以内に分割したときは、軽減の対象になります。
  3. 分割成立の翌日から4か月以内に更正の請求を行う 分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで、納めすぎた相続税の還付を受けられます。この4か月を過ぎると還付は受けられません。
  4. 3年を超える場合は税務署長の承認申請 訴訟中などやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合は、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内の分割でも対象になります。
実務上のアドバイス

未分割申告は、納税資金を一度用意しなければならない点が最大の負担です。小規模宅地等の特例も同様に使えないため、当初の納税額が数倍に膨らむことも珍しくありません。「揉めそうだから先延ばし」ではなく、一部分割(争いのない財産だけ先に分ける)で軽減の一部を確保する方法も検討できます。

配偶者の税額軽減のデメリット―二次相続で逆転する仕組み

ここが本記事でもっともお伝えしたい論点です。一次相続(たとえば夫の相続)で配偶者の税額軽減を最大限使うと、そのときの税額は確かに減ります。しかし配偶者が取得した財産は、配偶者が亡くなったときの二次相続で再び課税されます。しかも二次相続では、次の3つの理由で税負担が重くなります。

① 相続人が1人減る

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。配偶者がいなくなることで基礎控除が600万円減少し、法定相続分に応ずる取得金額が増えて適用税率も上がりやすい

② 配偶者の税額軽減が使えない

二次相続では配偶者がいないため、この制度は一切使えません

③ 配偶者自身の財産と合算される

配偶者がもともと持っていた預貯金・自宅なども加算されるため、課税対象がさらに膨らみます

【徹底比較】一次相続の分け方で総額はこれだけ変わる

前提:夫の遺産2億円、相続人は妻と子1人。妻固有の財産はなく、二次相続までに財産の増減もないものと仮定します。一次相続の相続税の総額は3,340万円(基礎控除4,200万円)です。

表4:一次相続の分け方別・一次相続と二次相続の税額比較(遺産2億円・妻と子1人)
一次相続での妻の取得額一次相続の納税額二次相続の納税額合計(トータル)
2億円(全部取得)668万円4,860万円5,528万円
1億6,000万円(枠を使い切る)668万円3,260万円3,928万円
1億円(法定相続分)1,670万円1,220万円2,890万円
結論

一次相続の納税額だけを見れば「全部取得」が最少(668万円)ですが、二次相続まで合わせると2,638万円も多く納めることになります。「1億6,000万円まで無税だから使い切る」という判断が、もっとも損をしやすいパターンです。

相次相続控除で多少は緩和されるが、逆転はしない

一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合は、相次相続控除により、一次相続で被相続人(この例では妻)が納めた相続税額のうち1年につき10%ずつ逓減した金額を、二次相続の税額から控除できます(国税庁「No.4168 相次相続控除」)。上の「全部取得」パターンで5年後に二次相続が発生したとすると、控除額は約334万円、トータルは約5,194万円です。それでも「1億円取得」パターンの2,890万円には及びません。

ただし「配偶者に寄せない」が常に正解でもありません。配偶者の生活資金・介護費用の確保、自宅の居住継続、配偶者の年齢と二次相続までの想定期間、二次相続で小規模宅地等の特例が使えるか、子の年齢や収入、生前贈与や生命保険の活用余地——これらを総合して初めて最適解が決まります。一次相続と二次相続をセットでシミュレーションすることが、唯一の正しい進め方です。

配偶者居住権という選択肢

令和2年4月1日以後に開始した相続では、配偶者居住権を設定できます。自宅の所有権を子が取得し、配偶者は住み続ける権利だけを取得する仕組みです。配偶者居住権は配偶者の死亡により消滅し、二次相続では課税対象になりません。配偶者の住まいを守りつつ二次相続の課税財産を抑えられるため、上記のジレンマを解く有力な手段になります。設定には遺言または遺産分割協議と登記が必要で、評価も複雑です。当事務所は司法書士・不動産の専門家と連携して対応していますので、サービス一覧もあわせてご覧ください。

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実務で多い5つの失敗パターン

  1. 税額0円だから申告しなかった もっとも多い失敗です。軽減の適用には申告書の提出が要件のため、無申告のままでは軽減が認められません。結果として本税に加え無申告加算税・延滞税まで課されます。
  2. 二次相続を考えずに配偶者へ全部寄せた 上の比較表のとおり、トータルで数千万円の差が出ます。分割協議書に押印してしまうと、原則としてやり直しはできません。署名の前が最後の分岐点です。
  3. 未分割申告で「分割見込書」を添付し忘れた これを忘れると、後から分割しても軽減は原則使えません。添付を忘れた場合の救済は極めて限定的です。
  4. 分割成立後の更正の請求を4か月以内にしなかった 分割が成立して安心し、還付手続を忘れるケースです。期限は分割成立の翌日から4か月と短いため、カレンダーへの登録をおすすめします。
  5. 名義預金を申告に含めなかった 「妻名義の口座だから相続財産ではない」という判断は、税務調査で最も否認されやすい論点です。隠蔽・仮装と認定されると、その財産には配偶者の税額軽減が使えません。生前の資金移動の整理は、申告前に必ず行ってください。

よくあるご質問

婚姻期間が1年未満でも配偶者の税額軽減は使えますか?

使えます。配偶者の税額軽減に婚姻期間の要件はなく、相続開始時に戸籍上の配偶者であれば適用できます。なお、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与・2,000万円の居住用不動産の特例)には婚姻期間20年以上という要件がありますので、混同にご注意ください。詳しくは贈与税のQ&A一覧をご覧ください。

相続放棄をした配偶者でも適用できますか?

相続放棄をすると相続人ではなくなりますが、遺贈により財産を取得した場合は配偶者の税額軽減の対象になります。国税庁も「遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額」を基準としています。なお、放棄をしても基礎控除の計算上の「法定相続人の数」には含まれるなど取扱いが複雑ですので、個別にご確認ください。

申告期限を過ぎてしまいました。もう軽減は受けられませんか?

期限後申告でも適用の余地はありますが、無申告加算税・延滞税が課され、遺産が未分割であれば軽減自体が受けられません。さらに、税務調査で指摘を受けてから申告した場合は加算税が重くなります。期限を過ぎている場合は、1日でも早く分割協議と申告の準備を進めることが損失を最小化する唯一の方法です。お問い合わせからすぐにご相談ください。

配偶者が取得した財産を、あとで子に贈与すれば二次相続対策になりますか?

有効な場合もありますが、注意が必要です。暦年課税の贈与では、相続や遺贈により財産を取得した人が被相続人から一定期間内に贈与を受けていた場合、その贈与財産の贈与時の価額が相続税の課税価格に加算されます。令和6年1月1日以後の贈与について、加算対象期間が3年から7年へ段階的に延長されました。

表5:生前贈与の加算対象期間(国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」)
被相続人の相続開始日加算対象期間
〜令和8年12月31日相続開始前3年以内
令和9年1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日〜相続開始前7年以内

なお、相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合は、加算対象期間内の贈与のうち相続開始前3年以内以外の部分(=3年超〜7年以内の部分)については、その贈与時の価額の合計額から総額100万円までは課税価格に加算されません(「毎年100万円」ではなく、期間全体で100万円です)。

この仕組みから、配偶者が高齢の場合は子への贈与が加算対象になり、二次相続対策の効果が出ないことがあります。一方で、相続や遺贈で財産を取得しない孫への贈与であれば原則として加算対象外となるなど、設計の余地はあります。生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数。相続人以外が受け取った保険金には適用されません)や配偶者居住権とあわせた設計をおすすめします。改正の経過措置の全体像は相続税・贈与税の計算の仕組みで解説しています。

妻に相続税がかからないなら、遺産分割協議書は簡単なものでよいですか?

いいえ。配偶者の税額軽減の添付書類として、遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書(協議書に押印したもの)が必要です。財産の特定が曖昧な協議書は、税務署から取得財産が確認できないと判断されるおそれがあり、不動産の登記や預金の解約にも支障が出ます。専門家によるチェックをおすすめします。

子どもがいない夫婦の場合、配偶者の税額軽減はどうなりますか?

子がいない場合、相続人は配偶者と直系尊属(父母等)、または配偶者と兄弟姉妹になります。配偶者の法定相続分がそれぞれ2/3、3/4と大きくなるため、軽減の枠も1億6,000万円より大きくなるケースがあります。一方で、遺言書がないと配偶者が単独で遺産分割を決められず、義理の兄弟姉妹との協議が必要になります。子のいないご夫婦は遺言書の作成が特に重要です。

会津若松で相続税の申告をする場合、相談は何から始めればよいですか?

まずは財産のおおまかな一覧(不動産・預貯金・有価証券・生命保険・借入金)ご家族の関係が分かる情報をお持ちください。それだけで、申告の要否と配偶者の取得割合ごとの税額の目安をご説明できます。当事務所は会津若松市中央に事務所を置き、地域の不動産評価や税務署の実務にも精通しています。報酬の目安は料金のご案内で公開しています。初回相談は無料です(0242-93-9373)。

まとめ

  1. 枠は「1億6,000万円」か「法定相続分相当額」の多いほう 遺産総額が大きいご家庭では、枠は1億6,000万円より大きくなることがあります。
  2. 税額0円でも申告書の提出が必須 申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月。提出しなければ軽減は適用されません。
  3. 未分割なら「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付 分割成立の翌日から4か月以内の更正の請求まで、期限管理が命です。
  4. 枠を使い切るのは損になりやすい 二次相続まで合わせると数千万円の差。分割協議書に押印する前の試算が唯一の防衛策です。
  5. 隠蔽・仮装財産には適用されない 名義預金や資金移動の整理は、申告前に必ず専門家と行ってください。

配偶者の税額軽減は、使い方を誤ると数百万円から数千万円の損失につながる制度です。「今回の税金」ではなく「二世代分の税金」で判断することが、ご家族の財産を守る最短ルートです。会津若松市および会津地域で相続税申告・生前対策をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

税理士 玉木 歩(東北税理士会 会員)/アスミル会計相続パートナーズ・玉木歩税理士事務所 代表
福島県会津若松市を拠点に、相続税申告・生前対策・法人税務を専門とする税理士。司法書士・行政書士・不動産の専門家と連携し、相続手続をワンストップで支援しています。

〒965-0037 福島県会津若松市中央1丁目5-29 B.Step201/TEL 0242-93-9373(受付 平日9:00〜18:00)
アクセス・駐車場のご案内お問い合わせ

法令基準日:2026年7月31日 / 最終更新日:2026年7月31日

出典・参考資料(すべて国税庁公式サイト)

【免責事項】本記事は、法令基準日(2026年7月31日)現在に確認できる相続税法・租税特別措置法等および国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。実際の適用可否・税額は、財産の内容やご家族の状況によって異なります。個別の事案については、必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。

税制は毎年改正されます。本記事は改正内容を確認のうえ随時更新しますが、ご覧いただく時点の法令と異なる場合があります。最新の情報は国税庁ホームページ等でもご確認ください。

本記事の計算例・早見表はわかりやすさを優先した概算です。実際の相続税申告では、各人の課税価格を千円未満切捨てで算出し、納付税額を100円未満切捨てとするなど、国税庁の申告書様式に従った端数処理を別途行います。二次相続の試算は、配偶者固有の財産がなく財産の増減もないという仮定に基づく単純比較です。

本記事は一般的な解説を目的としたものであり、財産評価や相続税・贈与税の申告の根拠資料としてご利用いただくことはできません。また、税務調査や税務署への説明において、本記事を根拠として援用することもできません。本記事の記載に基づきお客様ご自身が判断・実行された結果について、当事務所は責任を負いかねます。実際の財産評価および申告にあたっては個別の資料に基づく検討が必要ですので、必ず税理士にご依頼またはご相談ください。