「相続税や贈与税は、どうやって計算されるのだろう?」——ご家族に万一のことがあったとき、あるいはお子さまやお孫さまへ財産を贈るときに、多くの方がこの疑問に突き当たります。

相続税・贈与税の計算は、基礎控除・法定相続分・速算表という3つの仕組みを理解すれば、ご自身でおおよその税額をイメージできるようになります。この記事では、会津若松市で相続税・贈与税を重点的に取り扱う税理士が、2026年7月30日現在に確認できる法令・国税庁公表資料に基づき、令和6年(2024年)以降の改正内容や、令和8年(2026年)改正による制度終了も含めて、図解と計算例を交えながらわかりやすく解説します。

相続税・贈与税の全体像

相続税と贈与税は、どちらも「個人から財産をもらったとき」にかかる税金ですが、財産をもらうタイミングが異なります。

相続税

亡くなった方(被相続人)から、相続や遺贈によって財産を取得したときにかかる税金です。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行います。

贈与税

生きている個人から、贈与によって財産をもらったときにかかる税金です。1月1日から12月31日までにもらった財産について、翌年2月1日〜3月15日に申告・納税します。

重要ポイント

贈与税は、相続税とあわせて「資産の移転」全体に課税する仕組みとして設けられています。生前に財産を移してしまえば相続税の課税を免れられる、ということにならないよう、生前の移転にも税負担が及ぶ体系になっているわけです。

したがって、贈与税と相続税は切り離して考えることができません。とくに令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)によって、両者の関係はさらに密接になりました(詳しくは第9章で解説します)。

相続税の計算の仕組み【4ステップ】

相続税の計算は、「各人が取得した財産にそのまま税率を掛ける」というシンプルな方式ではありません。日本の相続税は、法定相続分課税方式と呼ばれる独特の仕組みで計算されます。

大きな流れは、次の4ステップです。

  1. 各人の課税価格を計算
    相続や遺贈で取得した財産の価額に、みなし相続財産(生命保険金・退職手当金など)や相続時精算課税適用財産、生前贈与加算額を加え、そこから債務・葬式費用・非課税財産を差し引きます。各人の課税価格は1,000円未満を切り捨てます。
  2. 課税遺産総額の計算
    各人の課税価格を合計した「課税価格の合計額」から、遺産に係る基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。
  3. 相続税の総額の計算
    課税遺産総額を、各法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して按分し、それぞれに速算表の税率を掛けて仮の税額を計算。合計したものが「相続税の総額」です。各人が実際に取得した額に直接税率を掛ける制度ではない点がポイントです。
  4. 各人の納付税額の計算
    相続税の総額を、実際に取得した財産の割合で按分し直し、必要に応じて相続税額の2割加算を行い、各種税額控除(配偶者の税額軽減、未成年者控除など)を差し引いて、各相続人の納付税額を確定します。
基礎控除を超えなければ、そもそも相続税はかかりません。まずは「基礎控除額の計算」から始めるのが実務の第一歩です。

相続税の基礎控除と法定相続人の数え方

基礎控除額の計算式

相続税の「遺産に係る基礎控除額」は、次の算式で計算します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

正味の遺産額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません(申告も原則不要です)。

法定相続人の数によって、基礎控除はこう変わる

法定相続人の数と基礎控除額の早見表
法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

法定相続人の範囲と法定相続分

法定相続人は、民法で定められた「相続する権利のある人」です。配偶者は常に相続人となり、それ以外の血族相続人は次の順位で決まります。

相続人の順位と民法上の法定相続分
順位相続人配偶者の法定相続分血族相続人の法定相続分
第1順位子(直系卑属)1/21/2(人数で均等分)
第2順位父母(直系尊属)2/31/3
第3順位兄弟姉妹3/41/4

※子が先に亡くなっている場合は孫・ひ孫へと代襲相続が続きますが、兄弟姉妹の場合の代襲相続はその子(甥・姪)の一代限りです。

養子の取扱いに注意:被相続人に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までです。基礎控除や生命保険金の非課税限度額の計算でも同じ扱いになります。ただし、特別養子縁組による養子や配偶者の実子(連れ子)を養子にした場合などは実子として扱われ、この人数制限を受けません。また、相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる養子は、法定相続人の数に含めないこととされています。

相続放棄した人も「法定相続人の数」に含める

基礎控除額を計算するときの「法定相続人の数」は、相続放棄があってもその放棄がなかったものとして数えます。ここでいうのはあくまで基礎控除等を計算するための人数であり、実際に財産を取得する権利(相続分)とは別の話です。実務では、この点を誤ると基礎控除が過少になり、余分な税額を計上してしまう原因となります。

相続税の税率(速算表)と計算例

相続税の速算表

課税遺産総額を法定相続分で按分した「法定相続分に応ずる取得金額」に、次の速算表を当てはめて税額を計算します。

相続税の速算表(相続税法第16条/国税庁 No.4155)
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
各人の税額 = 法定相続分に応ずる取得金額 × 税率 − 控除額

具体的な計算例:正味の遺産額 1億円、相続人は配偶者と子2人

事例:被相続人の正味の遺産額 1億円/配偶者と子2人が相続

① 基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

② 課税遺産総額

1億円 − 4,800万円 = 5,200万円

③ 法定相続分で按分し、各人の税額を計算

配偶者(1/2):5,200万円 × 1/2 = 2,600万円
 → 2,600万円 × 15% − 50万円 = 340万円

子A(1/4):5,200万円 × 1/4 = 1,300万円
 → 1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円

子B(1/4):5,200万円 × 1/4 = 1,300万円
 → 1,300万円 × 15% − 50万円 = 145万円

④ 相続税の総額

340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円

⑤ 実際の取得割合で按分し、税額控除を適用

「相続税の総額(630万円)」を、実際に取得した財産の割合で各人に按分し、そのうえで各種の税額控除を適用します。配偶者は「配偶者の税額軽減」により、実際の取得額が1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば税額はゼロになります。

※わかりやすさのため万円単位で示しています。実際の申告では、各人の課税価格を1,000円未満切捨てで計算するなど所定の端数処理を行うため、上記と数百円〜数千円単位で差が出ることがあります。

実務ポイント

「実際にどう分けるか(遺産分割)」は、相続税の総額そのものは変えませんが、各人の納付税額と特例の適用可否(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例など)に大きく影響します。その結果、家族全体で実際に納める税額の合計は分割方法しだいで変わり、数十万〜数百万円の差が出ることは珍しくありません。

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相続税で使える主な特例・税額控除

相続税には、税負担を大きく軽減できる特例や税額控除がいくつも用意されています。適用要件を満たしているのに使わないと、余計な税負担を抱えることになります。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

被相続人の配偶者が取得した正味の遺産額が、次のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。

1億6,000万円 または 配偶者の法定相続分相当額
配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続税の申告書の提出が必須です。「税額が0円だから申告不要」ではありませんのでご注意ください。また、原則として申告期限までに分割が確定した財産が対象ですが、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、その期間内に分割が確定すれば、更正の請求により適用を受けられます。

小規模宅地等の特例

被相続人が居住や事業のために使っていた宅地について、一定の要件を満たすと、次の割合で評価額を減額できます。

小規模宅地等の特例の限度面積と減額割合
宅地の種類限度面積減額割合
特定居住用宅地等(自宅の敷地)330㎡80%
特定事業用宅地等(事業用の敷地)400㎡80%
貸付事業用宅地等(賃貸物件の敷地)200㎡50%
この特例は、面積と減額割合だけで判断できるものではありません。誰がその宅地を取得したか、申告期限までの居住継続・保有継続・事業継続の要件を満たすか、いわゆる「家なき子」に該当するかなど、細かな要件があります。適用には相続税の申告書の提出も必要です。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

被相続人の死亡に伴い受け取る生命保険金や死亡退職金は、相続税の課税対象(みなし相続財産)になりますが、上記の金額までは非課税です。ただし、この非課税枠を使えるのは相続人が受け取った場合に限られます。相続を放棄した人や、相続人でない孫などが受取人の場合は、非課税枠の適用がありません。

※生命保険は相続対策として広く使われますが、契約者・被保険者・保険料負担者・受取人の組合せによって、相続税・所得税・贈与税のいずれの対象になるかが変わります。設計の前に必ずご確認ください。

その他の主な税額控除

相続税の主な税額控除
控除の種類内容
未成年者控除相続人である18歳未満の人について、18歳に達するまでの年数 × 10万円(1年未満の期間は1年に切上げ)
障害者控除相続人である障害者について、85歳に達するまでの年数 × 10万円(特別障害者は20万円。1年未満の期間は1年に切上げ)
相次相続控除10年以内に続けて相続が発生し、前回の相続で被相続人に相続税が課されていた場合、その一部を控除(適用できるのは相続人に限られます)
贈与税額控除生前贈与加算された財産にかかった贈与税額を、相続税から控除

贈与税の2つの課税方法(暦年課税・相続時精算課税)

贈与税には「暦年課税」「相続時精算課税」の2つの課税方式があり、受贈者(贈与を受けた人)は、贈与者(贈与をした人)ごとに、どちらかを選択できます。

暦年課税(原則)

1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に累進税率を適用します。
特別な手続き不要で、誰でも利用できる原則的な方式です。

相続時精算課税(選択制)

60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫への贈与について、贈与者ごとに選択可能。基礎控除110万円+特別控除2,500万円を控除した残額に一律20%の税率で課税し、贈与者の死亡時に相続税で精算する方式です。

相続時精算課税は、一度選択するとその贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできません。選択にあたっては、税理士による事前シミュレーションを強くおすすめします。

暦年課税の計算の仕組みと速算表

基本の計算式

贈与税額 = (1年間の贈与財産の合計額 − 110万円) × 税率 − 控除額

1年間の贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です(毎年それぞれ独立した贈与契約であることが前提です)。

「一般税率」と「特例税率」の違い

暦年課税では、贈与者と受贈者の関係によって、適用する税率が2種類に分かれます。

特例税率(特例贈与財産)

直系尊属(父母・祖父母など)から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与に適用される、税負担が軽い税率です。

一般税率(一般贈与財産)

上記以外の贈与(兄弟間、夫婦間、親から未成年の子への贈与、他人からの贈与など)に適用される税率です。

贈与税の速算表【特例贈与財産用】

贈与税の速算表(特例贈与財産用/国税庁 No.4408)
基礎控除後の課税価格特例税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

贈与税の速算表【一般贈与財産用】

贈与税の速算表(一般贈与財産用/国税庁 No.4408)
基礎控除後の課税価格一般税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

計算例:父から18歳以上の子へ500万円を贈与

事例:父から23歳の子へ現金500万円を贈与(特例税率)
① 基礎控除後の課税価格
 500万円 − 110万円 = 390万円

② 贈与税額(特例税率:400万円以下 → 15%、控除額10万円)
 390万円 × 15% − 10万円 = 48万5,000円
同額を「一般税率」で計算した場合との比較
一般税率(400万円以下 → 20%、控除額25万円)
 390万円 × 20% − 25万円 = 53万円

同じ500万円の贈与でも、直系尊属からの贈与(特例税率)のほうが4万5,000円安くなります。

相続時精算課税の計算と令和6年改正のポイント

制度の概要

相続時精算課税は、生前に大きな財産を贈与しても累計2,500万円まで贈与税がかからず、その代わり、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算して相続税で精算する制度です。

適用要件

相続時精算課税の適用要件(国税庁 No.4103)
区分要件(贈与の年の1月1日時点)
贈与者60歳以上の父母または祖父母など
受贈者18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属である推定相続人(子など)または孫

※孫については、推定相続人でなくても対象になります。また、事業承継税制の適用を受ける非上場株式等・事業用資産の贈与では、受贈者が推定相続人以外でも選択できる特例があります。

令和6年1月1日からの重要改正:年110万円の基礎控除が新設

令和6年改正

従来、相続時精算課税を選んだ人は「年110万円の基礎控除」の恩恵を受けられませんでしたが、令和6年1月1日以後の贈与から、暦年課税とは別枠で年110万円の基礎控除が使えるようになりました。

この110万円以下の贈与については、贈与税の申告が不要で、しかも相続財産にも加算されません。使い勝手が大きく向上した改正です。

※同一年中に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、この110万円は特定贈与者ごとの課税価格で按分します。

計算式

贈与税額 = (贈与財産の価額 − 110万円 − 特別控除額(最大2,500万円))× 20%

計算例:父から2,000万円の贈与を受けたケース

事例:父から子へ2,000万円を贈与、相続時精算課税を選択
① 基礎控除の控除
 2,000万円 − 110万円 = 1,890万円

② 特別控除の適用
 1,890万円 − 1,890万円(特別控除枠2,500万円のうち使用) = 0円

③ 贈与税額
 0円 × 20% = 0円

④ 翌年以降に繰り越される特別控除額
 2,500万円 − 1,890万円 = 610万円

贈与者(父)が亡くなったときには、この贈与財産のうち基礎控除110万円を控除した残額(1,890万円)を贈与時の価額で相続財産に加算して相続税を計算し、既に納付した贈与税があれば相続税から控除します。

※2,500万円の特別控除は、贈与税の期限内申告書を提出した場合に限り適用できます。申告を失念すると、上記の例でも20%の贈与税が発生します。

相続時精算課税を初めて選択する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。届出書の提出がないと暦年課税が適用されます。

生前贈与加算(3年→7年)の改正と経過措置

改正の概要

相続や遺贈により財産を取得した人が、その被相続人から生前に暦年課税で贈与を受けていた場合、その贈与財産のうち相続開始前の一定期間内のものを、相続税の課税価格に加算するというルールがあります。これを「生前贈与加算」と呼びます。逆にいえば、相続で財産を取得しない孫などへの贈与は、原則としてこの加算の対象になりません。

令和6年改正

令和6年1月1日以後の暦年課税による贈与から、生前贈与加算の対象期間が「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」に延長されました。

ただし、延長された4年分(相続開始前3年超7年以内)の贈与については、その期間の贈与財産の合計額から100万円まで加算対象外とする緩和措置があります。

経過措置:相続開始日ごとの加算対象期間

生前贈与加算の経過措置(国税庁 No.4161)
被相続人の相続開始日加算対象期間
〜令和8年12月31日相続開始前3年以内(改正前と同じ)
令和9年1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日から相続開始日まで(順次延長)
令和13年1月1日〜相続開始前7年以内(完全移行)
2026年(令和8年)時点で相続が開始した場合、加算対象期間はまだ「3年以内」です。7年ルールへの完全移行は令和13年(2031年)1月以降の相続からとなります。それまでは相続開始日に応じて段階的に加算対象期間が延びていくため、生前贈与のプランニングは長期的な視点が必要です。

暦年課税と相続時精算課税、どちらが有利?

暦年課税と相続時精算課税の比較
比較項目暦年課税相続時精算課税
基礎控除年110万円年110万円(令和6年〜)
特別控除累計2,500万円
税率10〜55%の累進一律20%
相続時の取扱い相続等により財産を取得した人が被相続人から受けた贈与のうち、相続開始日に応じて原則3年〜7年分を加算基礎控除110万円を超える部分を全額加算(贈与時の価額)
再選択いつでも切替可一度選択すると変更不可
向いているケース長期にわたる少額贈与、相続まで年数がある大型贈与、収益物件の早期移転、値上がりが見込まれる財産

贈与税の主な非課税特例と、終了した制度

贈与税には、要件を満たせば大きな金額を非課税で贈与できる特例が用意されています。ただし、いずれも期限つきの制度や細かな要件があるため、最新の状況を確認したうえで活用することが大切です。

1. 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与があった場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できます。

※同じ配偶者からは一生に一度しか適用できません。贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること、および贈与税の申告書の提出が必要です。

2. 住宅取得等資金の贈与の非課税

令和6年1月1日〜令和8年(2026年)12月31日の間に、父母・祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで非課税となります。

※受贈者が贈与の年の1月1日に18歳以上であること、その年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の家屋を取得する場合は1,000万円以下)であること、贈与の翌年3月15日までに資金の全額を充てて新築等を行い居住する(見込みである)こと、床面積40㎡以上240㎡以下であることなど、要件が細かく定められています。適用には贈与税の申告が必要です。

3. 教育資金の一括贈与の非課税(=新規適用は終了しました)

この制度は、令和8年(2026年)3月31日をもって新規の適用が終了しました。令和8年度税制改正により適用期限が延長されなかったため、2026年4月1日以後は、新たに教育資金管理契約を締結して非課税の適用を受けることはできません(新規の口座開設・追加拠出とも不可)。

ただし、令和8年3月31日までに拠出された金銭等については、引き続きこの非課税措置が適用され、契約期間中は教育資金として非課税で払い出すことができます。既存契約をお持ちの方は、受贈者が30歳に達したときなどの契約終了時の残額に対する贈与税、契約期間中に贈与者が亡くなった場合の管理残額に対する相続税(孫等の場合は2割加算の対象になり得ます)にご注意ください。

これから教育費を援助する場合は、後述の「扶養義務者からの都度贈与」や暦年課税、相続時精算課税の活用を検討することになります。

4. 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税(最大1,000万円)

直系尊属から18歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与について、受贈者1人あたり最大1,000万円(うち結婚に際して支払う費用は300万円が限度)まで非課税とする特例です。金融機関等との結婚・子育て資金管理契約の締結と、非課税申告書の提出が必要です。

この制度の適用期限は令和9年(2027年)3月31日までです。また、贈与を受けた年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用を受けられません。契約終了時や贈与者死亡時に残額があると、贈与税・相続税の対象になります。

5. 扶養義務者からの生活費・教育費

扶養義務者から必要な都度もらう生活費や教育費は、通常必要と認められる範囲であれば、そもそも贈与税の課税対象になりません。仕送りや学費の支払いはこれに該当します。ただし、受け取った資金を預金にしたり株式・不動産の購入に充てたりした部分は課税対象となります。

よくあるご質問(FAQ)

正味の遺産額が基礎控除以下なら、本当に何もしなくてよいのですか?

原則として、正味の遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかからず、申告も不要です。ただし、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用することで税額が0円になる場合は、これらの特例適用のために相続税の申告が必要です。「特例を使って0円」と「そもそも基礎控除以下」はまったく別の話ですので、混同しないようご注意ください。財産評価が微妙なケース、名義預金や生前贈与が疑われるケースでは、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」が届くこともありますので、税理士へのご相談をおすすめします。

毎年110万円ずつ暦年贈与すれば、贈与税はかからず相続対策になりますか?

毎年それぞれ独立した贈与契約であり、年110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。ただし、相続等により財産を取得した人が被相続人から受けた贈与は、相続開始前の一定期間(現在は3年以内、令和9年以後の相続から順次7年へ延長)の分が相続税の課税価格に加算されるため、直前の贈与は相続税対策としての効果が限定的です。

また、最初から「毎年100万円を10年間渡す」といった定期金の給付を約束していたと認定されると、その約束をした年に「定期金給付契約に関する権利」の贈与があったものとして課税されます。毎年の贈与契約書の作成や銀行振込による証跡確保が不可欠です。生前贈与の実行には、税理士と一緒に長期プランを組み立てることを強くおすすめします。

相続時精算課税を選んだ場合、その後暦年課税に戻せますか?

戻せません。相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については、選択した年以降すべて相続時精算課税が適用されます。ただし、令和6年1月1日以後は、相続時精算課税でも年110万円の基礎控除が使えるようになったため、少額贈与についてはメリットを享受できます。選択は「贈与者ごと」に行うので、たとえば「父からの贈与は相続時精算課税、母からの贈与は暦年課税」といった使い分けは可能です。

相続税の申告期限に間に合いそうにありません。どうすればよいですか?

相続税の申告期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(期限日が土日祝日にあたる場合は翌開庁日)。この期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税がかかり、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性もあります。

遺産分割が間に合わない場合は、未分割の状態で、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って申告し、その後の分割確定時に修正申告または更正の請求を行う方法があります。その際、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、分割確定後に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けられます。更正の請求は、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内という期限がありますのでご注意ください。10か月は思ったより短いので、早めに税理士へご相談ください。

不動産の評価はどうやって決まるのですか?

土地は原則として路線価方式(路線価が定められていない地域は倍率方式)で、建物は固定資産税評価額で評価します。路線価は毎年7月に国税庁から公表され、公示価格の約80%が一般的な目安とされていますが、あくまで目安であり、個別の評価額は補正計算によって変動します。

実際の評価では、土地の形状(不整形地・間口狭小・奥行長大など)や接道状況、貸家建付地・貸宅地・私道、居住用の区分所有財産(マンション)などについて、複雑な補正・特則の適用が必要となります。さらに、令和8年度税制改正により、令和9年(2027年)1月1日以後の相続等から、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産や不動産小口化商品は、通常の取引価額に相当する金額で評価することとされました。不動産の評価は相続税額を大きく左右するため、専門の税理士による評価をおすすめします。

まとめ:早めの準備が、将来の安心につながります

相続税・贈与税の計算は、基礎控除 → 課税遺産総額 → 法定相続分で按分 → 速算表で税額計算という基本の流れを押さえれば、全体像が見えてきます。しかし、実際の実務では、財産評価・特例適用・遺産分割・生前贈与加算など、判断が必要な論点が数多くあります。

この記事のまとめ
  • 相続税の基礎控除は 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
  • 相続税は法定相続分課税方式で計算(相続税の速算表を使用)
  • 贈与税は暦年課税(基礎控除110万円)相続時精算課税(基礎控除110万円+特別控除2,500万円)の選択制
  • 令和6年から相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設(期限内申告が必要な特別控除と混同しないこと)
  • 生前贈与加算は3年→7年に延長。ただし令和8年12月31日までの相続はまだ3年以内で、令和13年から完全移行
  • 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は申告が必要
  • 教育資金の一括贈与の非課税は令和8年3月31日で新規適用が終了。結婚・子育て資金は令和9年3月31日まで、住宅取得等資金は令和8年12月31日まで

相続税・贈与税の計算は「早めの準備」で結果が大きく変わります。「数十万円〜数百万円単位で税額が変わるケース」も珍しくありません。「まだ先の話」と思っていても、財産の把握と評価、そして計画的な生前贈与や特例活用の検討には、実は時間がかかるものです。

ご相談から申告完了までの流れ・料金は会津若松の相続税相談、生前贈与のご相談は会津若松の生前贈与・贈与税相談のページでご案内しています。本記事の執筆者については代表税理士のご挨拶をご覧ください。

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【参考・出典】(2026年7月30日現在確認)
この記事の執筆者

税理士 玉木 歩(東北税理士会 会員)
アスミル会計相続パートナーズ/玉木歩税理士事務所 代表
〒965-0037 福島県会津若松市中央1丁目5-29 B.Step201
TEL 0242-93-9373(受付:平日9:00〜18:00)/会津若松税務署管轄

会津若松市を中心に、相続税の申告と生前対策を主軸として、地域の個人・中小企業の税務をお手伝いしています。

法令基準日:2026年7月30日 / 最終更新日:2026年7月30日

【免責事項】本記事は、法令基準日(2026年7月30日)現在に確認できる相続税法・租税特別措置法等および国税庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。実際の申告要否・税額・特例の適用可否は、財産の内容やご家族の状況によって異なります。個別の事案については、必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。

税制は毎年改正されます。本記事は改正内容を確認のうえ随時更新しますが、ご覧いただく時点の法令と異なる場合があります。最新の情報は国税庁ホームページ等でもご確認ください。

本記事の計算例は、制度の仕組みをわかりやすくお伝えするための概算です。実際の申告では、各人の課税価格を千円未満切捨てで算出するなど、国税庁の申告書様式に従った端数処理を行います。

本記事は一般的な解説を目的としたものであり、財産評価や相続税・贈与税の申告の根拠資料としてご利用いただくことはできません。また、税務調査や税務署への説明において、本記事を根拠として援用することもできません。本記事の記載に基づきお客様ご自身が判断・実行された結果について、当事務所は責任を負いかねます。実際の財産評価および申告にあたっては個別の資料に基づく検討が必要ですので、必ず税理士にご依頼またはご相談ください。